家庭用昇華型プリンターで自作デカールに挑戦

製作研究所

家庭用プリンターによる自作デカール。
これまでインクジェット、レーザー、白・金銀化など色々試してきましたが、今回は以前から気になっていた“昇華型”に挑戦してみます。

俺と昇華型

30年近く前。
まだデジカメが35万画素だとか言っていた時代。

インクジェットはまだ“写真っぽい”とは言い難く、家庭用プリンターはどこか「印刷物」の域を出ていませんでした。

そんな時代に出会ったのが昇華型プリンターでした。

CMYを何度も往復しながら、少しずつ画像が完成していく。
最後にオーバーコートまで乗って、するすると写真が出てくる。

解像度は高くない。
でも、粒子を感じない。

あの“ほぼ銀塩写真”のような滑らかなグラデーションは、当時かなり衝撃でした。

そして2026年。
ふと思いました。

「これ、デカールに使えないか?」


昇華型とは

昇華型は、熱でインクを染み込ませる印刷方式です。
インクジェットのような網点がほぼ見えず、滑らかなグラデーションを作れます。

実際には、CMY+保護用オーバーコートの4層フィルムを何度も往復させながら印刷しています。

1ピクセルごとにCMYの濃淡を表現できるので
インクジェットのような網点感がほぼ見えません。

Kはなく、CMYを100%濃度で出力して重ね合わせることで黒を表現します。

その代わり、細線や極小文字のシャープさはやや苦手です。

昇華型で撮影した写真

写真ではわかりづらいですが、黒撮影用背景の黒幕のシワまで印刷されます。

出力される様子は見ていて楽しいので20秒動画にしてみました。

まずは網点比較

今回最初に確認したかったのは、“印刷方式による見え方の違い”です。

普段はそこまで気にならなくても、模型用デカールとして小サイズ化すると、各方式の特徴がかなり見えてきます。

今回は顕微鏡で比較してみました。

インクジェット

  • 粒子感が見える
  • 境界が柔らかい
  • カラーイラスト感が強い

滑らかではありますが、細線や小文字ではやや甘さも見えます。

レーザー

  • 網点感が見える
  • エッジがシャープ
  • 工業マーキング感が強い

コーションやライン系とはかなり相性が良さそうです。

昇華型

  • 粒感がほぼ見えない
  • 面として滑らか
  • 写真っぽい発色

“印刷された粒子”というより、面で色が乗っている感じ。

ただし、小文字や細線はやや苦手。
解像感そのものはレーザーほど高くありません。

レーザーは“線を描く”のが得意。
昇華型は“色を置く”のが得意。

そんな違いがかなり見えてきました。


無地デカール紙へ印刷できるのか

まず試したのは、SELPHY QX20へ無地デカール紙を通す方法。

SELPHY QX20

QX20専用紙サイズに無地デカール用紙をカットし、なんとか“専用紙っぽく”見せて通してみます。

結果として――

カットした用紙の認識は成功。

ここはかなり驚きました。

普通に考えれば専用品以外は弾かれそうですが、物理的には出力できます。

CMYを何度も往復しながら、少しずつ絵が完成していく様子は、やはり見ていて面白い。

「これだよこれ」と、ちょっと懐かしい気持ちになりました。


しかし定着しない

問題はここからでした。

印刷はできる。
でも、“デカールとして使えない”。

レーザープリンター用デカール紙に(SELPHYで)出力したもの

定着しない。

ここが最大の壁でした。

昇華型プリンターのインク(染料)は、一般的にポリエステルなどの樹脂分子の隙間に熱で染み込む(染着する)特性があります。市販のインクジェット用・レーザー用無地デカール紙のベース層(主にアクリル系やポリウレタン系の水溶性糊・クリア層)には染み込むだけの樹脂特性が足りなかった(あるいは熱で表面が変質した)可能性が高いです。

試したこと

手持ちのクリア、プライマーで樹脂特性が補えないか検証してみました。

そのまま印刷

当然NG。

レーザーは定着せず、
インクジェットは色がまったく乗りませんでした。

クリア

改善見られず。

プライマー

定着変化ほぼなし。

熱+圧着

転写も試しましたがNG。

理屈としては行けそうに見えても、実際にはなかなかうまくいきません。

インクジェットやレーザーが“表面に乗る”のに対して、昇華型は“染み込ませる”方式。

つまり、受け側素材との相性そのものが成立していない可能性があります。

ここは想像以上に難所でした。


それでも、可能性は感じる

現時点では、SELPHY QX20を直接デカール化する方法は成功していません。

それでも、“網点のないグラデーション”には、今の家庭用プリンターにはない魅力を感じています。

解像度は高くない。
でも、粒子を感じない。

あの独特の質感は、今見てもやはり特別でした。


次回チャレンジ候補

次の候補として考えているのが、昇華転写プリンターとDTFパウダーの組み合わせです。

候補として調査中なのが、Brother SP-1

昇華転写の滑らかな発色に、DTFパウダーの白層形成を組み合わせれば、

  • 水転写デカールらしい半透明感
  • 家庭用では難しい“白印刷”

この両立に近づけるかもしれません。

もちろん、まだ仮説段階です。

実際には、

  • 厚み
  • 粒子感
  • 定着性

など、新しい問題も出てくると思います。

それでも――

網点のない夢を、もう少し追いかけてみようと思います。

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